コラム“マッチレポート”

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2019マッチレポート|準決勝|穂積vs山口

内田 暁

■2019年大会マッチレポート③:準決勝 穂積絵莉 6-2, 6-1 山口芽生■

「今日は完勝でした」と、穂積は迷いなく言葉にした。
 許したゲーム数は僅かに3で、試合時間は1時間ジャスト。
スコア以上に、「先に先に攻めて、相手にプレーをさせなかった」という内容に納得したが故の「完勝」発言だ。

 今季、守備力の向上と硬軟織り交ぜたプレーを目指してきた穂積が、この大会では意識的に「攻撃」に比重を置いた。
 同時に今日の試合では、軌道の高いボールを用いたり、敢えて緩いボールを誘い球にして、相手に打ち込ませてカウンターを決めてみせる。今大会、戦うたびに目指すテニスに近づく穂積が、ここまでの4試合で「今日が一番」と自画自賛した。

 心理面に関しても、最近は自身の成長を感じることが出来ているという。昨年からメンタルコーチに師事しはじめ、自分の「考え方のクセ」が分かってきたこともその一因。
 ダブルスでは、常にポジティブでパートナーにも積極的に声を掛けていく穂積だが、シングルスになるとネガティブな考えに陥ることが多く、一つのミスを引きずりやすい。
 そこで、「ならば……」とひねり出したのが、「シングルス時にもダブルスのように、自分で自分にポジティブな言葉を掛ける」という対処法。メンタルコーチとの対話を経て、自分の感情を客観視できるようになるにつれ、この手法は効果を発揮しはじめた。山口との試合でも、第1セットの第5ゲームでブレークのチャンスを逃した時、この思考法が奏功する。
 「相手が良いプレーをしたのだから、仕方ない。自分は変わらず攻めていこう」と言い聞かせ、続くサービスゲームをキープした時、試合の趨勢は決した。

 快勝したその先で穂積が対戦するのは、95位のポーラ・バドーサ(スペイン)。ランキングや勢い的にも、今大会で頭ひとつ抜けた実力者だが、穂積は「自分のやることは、あまり変わらない」という。
 今季、意識的に取り組んできた「どんなボールにも食らいつく」姿勢と、今大会でつかんだ攻撃性。それらを“ダブルス方式”のメンタリティで統合させ、タイトルを掴みにいく。

(ライター 内田暁)

著者

内田 暁
浜松ウイメンズオープンオフィシャルライター|編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)などがある。