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2019マッチレポート|準々決勝|阿部vs森崎

内田 暁

■2019年大会マッチレポート①:準々決勝 阿部宏美 6-2, 6-3 森崎可南子■

「いまいち集中してなかったし、高く上がったボールもドライブボレーに行かなかったし、自分から攻めずに相手がミスしてくれるの待ってただけだし……」

 試合を振りかえる言葉やその表情は、どう見ても敗者のそれ。ともすると、ふて腐れているようにすら見えるこの19歳が、今しがた6-2,6-3の勝利を手にしたばかりとは、にわかに信じがたいだろう。
 
 確かに阿部が言うとおり、この日の彼女のプレーはリスクを負わず、結果として守備に追われる場面が多かった。ものものしいテーピングが示す通り、肩に痛みを抱えていたことも、思うように攻められたかった理由の一端だろう。先週、大学の日本一決定戦で連日単複2試合を戦い、筑波大学に初の日本一をもたらした代償は、決して小さくはなかったようだ。

 この日の勝利に対する阿部の自己評価が極端なまでに低いのは、彼女が大学に進んで以来感じてきた、自身の弱点や課題にも起因している。
 高校でも日本の頂点に立った阿部だが、大学での戦いではここまで、似たパターンで負けることが多いという。それは、相手に緩いボールを打ち続けられ、決めきれないうちに巧みにポイントを奪われる展開。
「やれることが少ないので、前に入りたくてもできない。一緒にラリーしてつきあって……という感じになる」
 この半年間、抱えてきた課題ともどかしさ――。それを改めて突きつけられた一戦だったからこそ、スコア上は快勝だったにも関わらず、阿部の顔に笑みは無かった。

 プロも出場する国際大会でのベスト4は、これが初。その先で対戦するのは、今大会のナンバー1シードで、世界95位のポウラ・バドサ(スペイン)。既にグランドスラムにも出場する、文字通りのワールドクラスのトップ選手だ。
 「一瞬で終わりますよ」と、来たる一戦の結果をシニカルに予測する阿部だが、常に、言葉とは裏腹の心踊る試合を見せてきた彼女なだけに、期待を抱かずにもいられない。
 
 「とりあえず走る。いや、走ってもダメかな? やりたいことをやる。それが何かまだ分からないけれど……やってみながら決めます」
 
 試合の中で彼女が見いだす「やりたいこと」。それこそが、いつも辛い自己採点を、大きく上げる鍵になる。

(ライター 内田暁)

 

著者

内田 暁
浜松ウイメンズオープンオフィシャルライター|編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)などがある。