岡村恭香(359位)vs ジョアナ・ガーランド(333位)

 昨日の『見どころ』で、岡村選手の試合展開やプレーを「予想が難しい」「蓋を開けてみなければ分からない」と言いましたが、それは誤りだったと訂正しなくてはいけないでしょう。3回戦での岡村選手は、攻め急がず、ラリーを組み立て、押さえるべきポイントを押さえて手堅い勝利を手にしました。周囲が抱くイメージと現実の乖離は、この1~2年での岡村選手の成長の証し。今の岡村選手は、本人曰く「自分で試合を壊さなければ結果が期待できる、計算できる」選手です。

 その岡村選手が準決勝で対戦するガーランド選手は、イギリス生まれの台湾育ち。ジュニア時代には、内島萌夏選手や佐藤南帆選手とダブルスを組んで好結果を残しています。

 砂入り人工芝でのプレー経験は少ないでしょうが、先週の牧之原ではベスト8、そして今大会はベスト4。その高い順応力は試合運びにも発揮され、もつれた展開でも大事なポイントを取り、試合をまとめて勝ち上がってきました。そのようなテニスはいわば、今の岡村選手と似ていると言えるかもしれません。

 どちらが相手の攻略法を先に見つけるか? 互いが互いを崩そうとするなかで、どちらがより踏ん張れるか? 「計算できる」両選手なだけに、競った好試合が見込めます!

加治遥(245位)vs 清水綾乃(425位)

 今大会に戻ってきた時、「私が至るところに居るな」と、ディフェンディングチャンピオンは少し気恥ずかしさを覚えたと言いました。会場のみならず、街中に貼られた大会ポスターにフィーチャーされる加治選手は、今大会の“顔”でもあります。

 このポスター写真でラケットを振る加治選手の姿は、まるでバレエを踊っているかのよう。実際のプレーでも、長い手足とバネを生かした端正な動きが、加治選手の持ち味です。特に今大会ではサーブが好調で、高いファーストサーブ率を誇ります。エースを狙うというよりも、サーブからの展開力や、3球目のアタックが鍵でしょう。対する清水選手は、リターン巧者。加治選手のセカンドサーブを、前に入って鋭く叩いてくるはずです。加治選手のサーブ対清水選手のリターンが、この対戦のひとつの見どころでしょう。

 基本的には、ベースラインからの安定したストロークを武器とする両選手なだけに、激しいラリー戦も試合の花。清水選手は、得意のアングルショットからダウンザラインへの展開に持ち込みたいところ。対する加治選手は清水選手の得意なパターンを封じるべく、センターでの打ち合いを増やしてくるのでは? そのあたりの駆け引きも、ぜひご堪能下さい。

荒川晴菜/伊藤あおい vs 阿部宏美/川口夏実

 ダブルスの決勝戦は、実に楽しみなカードが実現しました! 数字やデータだけ見れば、第1シード対ノーシード。前年優勝者でもある荒川/伊藤組が、断然優勢に見えます。ですが、セットを落とすことなく決勝に駆け上がった阿部&川口には、何よりも勢いがあります。組むのは今回が初ですが、試合を重ねるごとに互いの動きや特性を理解していく二人。急造ペアは、急成長ペアでもあります。

 そのような背景に加え、このカードが興味深いのは、プレースタイルやケミカルのコントラスト です。荒川と伊藤の両選手は、いずれもトリッキーかつ定石も知るダブルス巧者。ペア結成は1年ぶりながら、お互いが持つ対戦相手の情報を交換し、戦略を立てるまでに化学反応も深めています。

 対する阿部と川口の両選手は、高い運動能力とセンスこそが武器。特に、2019年全豪オープンJr.ダブルス優勝者の川口選手は、全身のバネを生かし左腕から驚異のパワーショットを放ちます。

 そんな魅力的な両ペアの対決では、いかなる攻防が見られるか? ぜひ注意して見ていただきたいのが、コート上の4選手のポジショニングです。相手の動きや打つコースを予測した上で、いつどのように、誰が仕掛けるのか? ボールを打っていない選手の動きにこそ、勝負の行方を分ける鍵があるはずです。