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2018注目選手|輿石亜佑美

内田 暁

2018年大会注目選手紹介②:輿石亜佑美(こしいしあゆみ)

彼女のテニスにまつわる最も古い思い出は、姉が練習するコートサイドでボールを拾いながら、「わたしもやりたい! わたしもやりたい!」と親にせがんだ記憶だという。両親、さらに姉もテニスを嗜む一家の末っ子にとって、コートが立ちたい場になるのは、ごくごく自然の成りゆきだった。

3歳の頃から、コートでボールを打ちたがったというこの原体験が、その後も、輿石亜佑美のテニスへの情熱やモチベーションとなっていく。
「練習が好きじゃない……というと語弊が生まれるんですが……」
いたずらを白状する子供のように、決まりの悪そうな笑みをこぼして輿石が言う。「試合の方が頭が回るというか、考えながらできるんです」。

 そんな彼女の特性や個性を、周囲も早い時点から見抜いていたのだろう。特に、小学6年生時から師事しはじめた山崎史子コーチは、「亜佑美は試合で強くなるタイプ」だと言い、多くの試合に出ることを推奨したという。亜細亜大学時代にインカレでシングルス2連覇、ダブルスでも優勝した経歴を誇る山崎コーチの後押しもあり、輿石は中学生の頃から、大人たちと混じって多くの実戦経験を積んできた。

そのように年長者に混じり揉まれてきた彼女のテニスの武器は、本人も認めるように「頭」と「足」。相手のパワーをいなしながら戦い、ここぞという時は、最も自信を持つバックのストレートで自ら勝利への道を切り開く。
「プレッシャーが掛かる状況は嫌いではないです。コーチからは、プレッシャーの掛かる時ほど『ポイントを取りたい』ではなく『絶対に取る』という気持ちを持つようにとも言われているので」と明言する口調には、穏やかながら意志の強さが宿る。現在はまだ高校3年生だが、卒業後にはプロ転向を既に決意。その理由も「生活が掛かっている方が、プレッシャーにも強くなれる」と言うのだから頼もしい。

なお試合が大好きな彼女だが、文字通りの“三つ子の魂百まで”で、球拾いは今でも好きなのだという。ボールパーソンの居ない大会では、ボールを拾いに歩いていくその間に、頭を整理し色々と考えているのだそう。
彼女が、ゆっくりボールを拾いにいくその時、既に、次のポイントへの戦いは始まっている――。

著者

内田 暁
浜松ウイメンズオープンオフィシャルライター|編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)などがある。