2018年大会注目選手⑥:波形純理

17歳の坂詰とは、先週に引き続き、この浜松オープンでも2回戦で対戦。失う物のない強みで攻める17歳に、序盤はやや押されているようにも見えた。
ただそれは、“36歳対17歳”という外形的な要因から、周囲が勝手にはめ込むステレオタイプに過ぎないかもしれない。
「向かってこられているとか、そういう感じは特に無いです。私も守る物はないから。そんなに気にならないです」
実年齢より遥かに若く見える波形純理は、そう言い屈託なく笑った。

 年齢差などは気にならないという波形だが、経験が彼女の武器であることも、また事実だ。前回の対戦では、相手の攻撃的なプレーに気持ちの面でもやや受け身に周り、第1セットを奪われた。その反省と分析を活かし、今回は「気持ちで引かず、自分もなるべく高い打点で打っていこう」と、ベースラインから下がらず打つ。とはいえ決して、遮二無二攻める訳ではない。
「相手に気持ちよく打たせないように、深いボールでコーナーをついて、ミスを誘う感じで」
その波形のショットの精度の高さに、若い坂詰は対応しきれなかった。6-4,6-4のスコアは、経験や判断力をも加味した上での、相手との実力差を映していると言えるだろう。

今季の波形は全豪オープンから全米オープンまで、全てのグランドスラムの予選に出場した。だが勝利は手にできず、悔しさや失意を覚えたという。
周囲は、未だグランドスラム予選に出られる波形の地力と、モチベーションを称賛する。だが当人にとり、それら賛辞の前に隠れる「その年齢なのに」という枕詞は、むしろ不要なものだろう。
「ここからは危機感を持って、ダメだったらやめるくらいの気持ちでいる。グランドスラム予選は勝てなかったので厳しさは感じるけれど、勝ちたいし、このまま諦めちゃいけない、もっと実力をつけなくちゃと思いました」。

モチベーションやテニスへの情熱という意味では、今も全く、落ちることはない。どんなに調子が悪くても……仮にケガや体調不良で身体が十分に動かなくても、ボールを打ちたいと思うのだと言った。黄色いボールを、ラケットのスイートスポットで捕らえた時の手のひらの感触から沸き起こる喜びは、決して色褪せることはない。
「テニスは、ずっとやっていきたい」
でもだからこそ、危機感を持って今は、自分を追い込んでいる。

グランドスラムの本戦に最後に出場したのは、2011年の全仏オープン。
あの大舞台に再び帰るためにも、今大会で波形が目指すは、優勝のみである。