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2018注目選手|坂詰姫野

内田 暁

2018年大会注目選手紹介③:坂詰姫野(さかつめひめの)

2018年を迎えたばかりの頃、坂詰姫野にとって、未来はあまりに不確かだった。
「1年前の自分に、『今こうなっているよ』と言ったらびっくりすると思います。『絶対うそ! そんなはずない!』って、信じないと思います」

 まるで、1年前の“仮定の自分”に心境を重ねたように、目を丸くして彼女が言う。
フォアに全く自信が持てない。自信がないから、ボールを相手コートに入れるだけになってしまう……それが、今年3月頃までの彼女だったという。

変化へのきっかけは、いくつかの出会いと人の縁、そして自らの決断だった。
今年1月の全豪オープンジュニアに帯同していた金子和宏トレーナーは、数年前に見た小学生の頃の坂詰と、目の前の姿の相違に驚きを覚えたという。跳ねるように早いタイミングでボールをとられていた元気な少女が、ベースラインのはるか後方で構えるようになっている……。
それから約2ヶ月後――金子がスタッフを務める“Team YUKA”の合宿参加応募者欄に、坂詰姫野の名前が乗っていた。
「変わった名前だから、同姓同名の他人ってことはないよね?」
そんなことを、TeamYUKAの代表と金子はささやきあう。ちなみにその代表とは、現在の金子の伴侶であり、プレーヤーとしては世界ランキング52位、指導者としてもフェドカップ日本代表監督の実績を持つ、吉田友佳である。

キャンプに参加したその僅か1ヶ月後には、坂詰は住む部屋を見つけ、TeamYUKAの一員となる。それまで通っていた高校も、2年生からは通信制のそれへと変え、本格的にテニスに打ち込める環境を選び取った。
TeamYUKAを訪れた坂詰が嬉しい衝撃を受けたのは、トレーナーが選手個々へのトレーニングメニューを考え、食事もチェックしてくれること。そしてそれら身体の動きとテニスの技術や戦術面を、コーチたちが上手くつなげてくれることだ。また、吉田からの指導や、語り聞かせてくれる自身の経験談は、坂詰が漠然と抱いていた「世界で戦うプロ」の夢を、現実的な像へと結んでくれる。
フィジカルの向上と技術及び戦術の研鑽、そして明確になった目的意識――まさに心技体が結びつき、この夏に坂詰は、全日本ジュニア、さらに京都ITF15,000ドルのタイトルまでつかみ取る。
「ITFでも結果を残せたので、もうジュニアは良いんじゃないという話になり……」
この8月に17歳を迎えたばかりだが、今後はプロの大会を回っていく心づもり。来年4月には、正式にプロ転向を考えている。

未来が不確かなことは、もちろん今も変わりない。だが今の彼女には、進むべき道が、目指すべき地点が見えている。
今大会の目標は? そう問うと、17歳は目を輝かせて即答した。
「まずは一つひとつですが、優勝目指してがんばります!」

著者

内田 暁
浜松ウイメンズオープンオフィシャルライター|編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)などがある。