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HAMAMATSU WOMEN'S OPEN / COLUMN / ■2021年大会注目選手紹介①:津田梨央■

■2021年大会注目選手紹介①:津田梨央■

内田 暁

 
168㎝の痩躯がコマのように回転すると、放たれたボールは弧を描き、時にベースライン深く、時にサイドラインを鋭角にとらえた。
決して、力まかせに打つのではない。緩い打球や浅いボールも織り交ぜながら、ミスも誘いつつ巧みに攻める。
「相手が予想つかないタイミングで打ったり、アングルショットやドロップショットを使ったり。臨機応変にプレーするようにしています」
自身のテニスの持ち味を問うと、明瞭な答えが返ってくる。
「お手本はロジャー・フェデラー」という14歳が、浜松ウィメンズオープン・ワイルドカード予選を勝ち抜いて、本戦の切符をつかみ取った。
名古屋出身の津田梨央は、東海地区では「テニス一家の末っ子」として、以前より知られた存在だったという。
ラケットを初めて握ったのは、2歳の時。コーチの父親の手ほどきで、兄や姉たちとともに、学校に通うようにテニスコートへ足を運んだ。
進路やテニスの方針は「お父さんと話して決める」という津田だが、何かを強制されたことはないという。
今のようなスタイルになったのも、あくまで自分が望んだため。フェデラーのような「センスある」テニスに、心もプレーも引き寄せられた。
14歳で大人の大会に挑むのは、日本の感覚で言えば早いかもしれない。ただ、「相手が年上の方が良いプレーができる」という特性も自覚する彼女は、将来も見据えた上で、実力者たちとの対戦を望んだ。
とはいえ今回のワイルドカード予選優勝は、望んだ以上の結果だったという。
「持ってるな、私って」。
言うと当時に、無邪気な笑顔がはじけた。
将来の夢は——?
その問いに「プロになります!」と即答した後、「あ……なりたいなと思っています」と恥ずかしそうに続ける。
“持っている”14歳が、台風の目の気配をまといつつ、プロの世界へと乗り込んでいく。
【追記】
ボールを打つ姿が、どことなく、昨年の全仏オープン優勝者のイガ・シフィオンテクを彷彿させる津田。
「それ、良く言われるんです! 真似した訳ではないんですが、すごく嬉しいです」とのことです。
 
 
 
 

著者

内田 暁
浜松ウイメンズオープンオフィシャルライター|編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)などがある。